国語を得意にするためのトレーニング第4回「書かれていないことに気づくために」②
前回のトレーニングでは、「雨がやんだ」「灯りがともった」「顔を上げて言った」という表現を学びました。
今回も前回同様、その表現には書かれていないことを読み取る練習を行います。
今日のポイントは3つあります。前回と今回の内容をふまえて、次回は日比谷高校の入試問題を解説しますので、まずはしっかりと勉強しましょう。
では、いきます。
もし世の中の時計がすべて丸いものであれば、「丸い時計」という表現の必要はありませんよね。
つまり、「丸い時計」という表現が書かれているとすれば、丸くない時計が意識されていることがわかります。
書かれいるものから書かれていないことを読み取るためのポイント。
今日の一つ目です。
①修飾語句から他の可能性を考える。
・制服を着た中学生→私服の中学生
・幸せな日々→幸せとはいえない日々(不幸な日々)
・日本に住んでいる人→日本以外の国に住んでいる人
次は、今と同じように「修飾語句」に注目して変化を読み取ります。
急に意味をもった叫びになって響いてきた。
この一文の「急に」に注目します。「急に」があることによって、何の前触れもなく突然変化したことがわかりますよね。この場合であれば、特に意味をもたなかった言葉が意味をもった言葉に変わって聞こえたということになります。
この一文の場合、同じことは「なって」という言葉からも読み取れます。
つまり、「急に」という修飾語と「なる」という変化を示す単語から、その一文に書かれていなかった、その前の状態が予測できるということになります。
②「修飾語」・「変化を示す単語」から、その前の状態を読み取る。
・ますますしあわせになった→もともとしあわせだったけど、よりしあわせになった
・いつか街になっていた→前は違ったのに気づかないうちに変化していた
・いきなり出てきた→出てくるとは予想できていなかった
では、本日3つ目のポイントです。
「地球」という言葉を辞書で引いてみます。
・太陽系の第三惑星で、われわれ人類が住むほぼ球形の天体。一個の衛星(月)をもつ。水と空気に恵まれ、多くの生命体が存在する。(『明鏡』より)
・われわれ人類が住む、ほぼ球形の天体。太陽系の惑星で、三番目に太陽に近いもの。月を衛星に持ち、一年で太陽を回る。(『新明解国語辞典』より)
もし、太陽系という存在が意識されていなかったら、地球という言葉は生まれなかったのではないでしょうか。
○○市立第三小学校という名前は第一、第二があって初めて生まれるものですよね。
もっと単純に、リンゴはミカンやバナナではないということですし、雨は晴れや曇りではありません。野球はサッカーやバスケットボールではないのです。
「白いぼうし」に出てきたくだものは「夏みかん」だったのです。バナナでもリンゴでもブドウでもありません。色が違いますよね、形も違いますし、大きさも違います、匂いも味も違いますね。こんなふうに他のものと比べることで、なぜ「夏みかん」だったのかと考えるのです。同じように「白いぼうし」はなぜ他の色ではないのか。そう考えるのです。さらになぜ「ぼうし」なんだ? 他にどんなものでもよかったんだろう? と考えると書かれていないことが読み取れます。
③その単語と同じ種類のものと比べて違いを考える。
お疲れ様でした。
ある意味、当たり前のことしか書いていませんが、この当たり前のことを当たり前のようにやれるようにすることが大切なんです。
これが徹底されると、当たり前のように高得点をとれるようになりますから。
楽しみですね。
国語の成績を上げるために(復習の実践例も示しました)
国語の成績を上げるために。
1)語彙を増やす。
文章を読むにも、思考をするにも、われわれは言葉を使います。
ですから、使える言葉の数が多いということはたいへん重要になります。
そのために、
①漢字の勉強
・熟語の意味
・漢字それぞれの訓読みをつかむ
・同じ漢字の他の熟語も見ておく
すでに、このブログで示したのですが、漢字をできるようにすることは合格に直結しますので是非がんばってください。
②自分の興味のある分野の本を読む
中学生であれば、このブログをわざわざ読んでいる時点で大丈夫です(笑)。
中学生のお子様をお持ちの保護者様の場合は、「うちの子は本も読まないし」なんて嘆く必要はありません。今時、本を読まないなんて普通です。だから、興味のある分野を深掘りさせるのがいいんです。活字にふれるのが普通になるといいですね。
※語彙はあった方がいいですが、苦手を克服する程度であれば、それほど重要ではありません。自分の持っている範囲の言葉をしっかりと意識して読む練習をすれば十分です。
2)「復習ノート」を作る。
①設問文をすべて書く。選択肢はまだ書きません。
・設問からわかることを書く。
例)「精神分析家の仕事も」の「も」を⭕️で囲んで、「何と同じなの?」とメモをする。
例)「どういうことか」に線を引いて、「傍線部を言い換える」「要素それぞれの言い換え」などとメモする。
・設問の条件に線を引いて目立たせる。
②解答までの流れをまとめる。
「解答まで」という言葉には、「⚪︎⚪︎から」という言葉が隠されています。
この場合は2通りあります。
1 傍線部から解答までの流れ
2 文章の始め(段落の始め)から解答までの流れ
③答えを書く。
選択肢の場合は、正解と自分の間違えたものの2つを書き、両者の違いをメモしておくとよいですよ。
では、②の「解答までの流れ」の実例を示します。
1の設問からの流れで書いてみます。
以前のブログで触れた箇所を使って書きますので、こちらもご覧ください。
「復習ノート」記述例①
〈ポイント整理パターン〉
「精神分析家」と「落語家」が並立。「も」への注目が大事!
では、どう同じなのか?
「落語家」
a「演じている自分」、それを「見る自分」の分裂
b 根多を演じているときに、複数の登場人物を演じ分けている
これをふまえて、精神分析家をとらえる。
「精神分析家」
b 患者の自己の複数の部分に自分もなる
a 患者の世界を、分析家自身の視点から眺める
このa・bが対応している。
「精神分析家」のa・bをふまえて答えを書く。
〈記述パターン〉
「精神分析家の仕事も」とあるので、前段楽に書かれていた「落語家」と並立であることを意識する。つまり、「精神分析家の仕事」と「落語家」の仕事は、どちらも「分裂に彩られている」のだ。よって、両者の共通点を意識して考える。そのため、まず「落語家」の「分裂」について調べる。
すると、「『演じている自分』とそれを『見る自分』の分裂」と「根多に登場する人物たち」が落語家の内部で「たがいの意図を知らない」「自律的」な「複数の自己」として「分裂」していることがわかる。
「精神分析家」もこれと同じように「分裂」していることをふまえて、読み進める。すると、「分析家は患者の自己の複数の部分に同時になってしまい、その自己は分裂する」という箇所に気付ける。これは落語家が「根多」をやっているときの「登場人物」という「複数の自己」に「分裂」していることと重なる。これだけでは、「演じている自分」と「見る自分」の話がないので、さらに読み進める。次の段落に「分析家」は「分析家自身の視点から自体を眺め、そうした患者の世界を理解する」とある。これにより、分裂の2つのあり方が確認された。あとは、この2点をふまえて答える。
本当は「実は」と「彩られている」にも触れる必要があるのですが、今回は省略しました。
以上です。
最初は、「ポイント整理パターン」で始める方がやりやすいと思います。
慣れたところで「記述パターン」に切り替えて、記述力も養いましょう。
それにも慣れたら「ポイント整理パターン」を使いつつ、自分の間違えた箇所を明確にする復習をするとよいでしょう。
国語を得意にするためのトレーニング第3回「書かれていないことに気づくために」①
苦手な国語を克服するためのトレーニング第3回を始めますね。
今回は、「書かれていないことに気づくために」と題して進めます。
では、早速問題です。
問1 「雨がやんだ」という文から、さすがにこれだけは間違いなく言えるということを考えてください。
答え それまで雨が降っていた(ということ)。
では、次の問題です。最初の問題を踏まえて考えてください。
問2 「灯りがともった」という文から、わかることを教えてください。
答え それまで灯りがついていなかった(ということ)。
続けます。
問3 「顔を上げて言った」という文から、わかることは?
答え ここで何かを「言った」人はそれまでうつむいていた。
いかがですか?
何のために、こんなことを聞くの? と思ってしまいますよね。
でも、すべて実際に出題されたことのある文なんです。
問1は「頭上の雲が切れてわずかな青空がのぞく」という文が続いて、登場人物の心情が変化していくことを暗示する箇所となっています。
問2は登場人物の安心感を読み取る問いとして出題された箇所です。
問3は登場人物が強い決意のもとに相手にものを言っていることを読解する箇所として出題されました。
では、改めてふりかえってみましょう。
問1は「雨がやんだ」でした。そこから、それまで雨が降っていたということを把握しました。
つまり、「雨がやんだ」という一文を、それまで降っていた雨がやんだ、と理解したのです。
これによって、
・雨が降っていた。
↓
・雨がやんだ。
という変化が見えやすくなりましたよね。
これに情景描写は心情や内容を暗示するという知識があれば、登場人物の心情が暗いものから明るいものへと変化することを暗示する表現になっているというのも読みやすくなるのではないでしょうか。
次に問2です。
これも同じように考えましょう。
・灯りがついていなかった。
↓
・灯りがともった。
灯りがついていなかったときと比べて灯りがともれば明るくなりますよね。
問1と同様に暗いものから明るいものへの変化が暗示されるわけですが、実際の文章ではそれまで登場人物は不安でいっぱいだったので、その反対の安心感を読み取る問題となっていました。
問3です。
・うつむいていた。
↓
・顔を上げて言った。
うつむいて相手の話を聞いていた場面を想像してください。そこで、「顔を上げて言った」と続いています。それまでただ黙って聞いていた人が、相手に向かってうつむきながら言うのではなく「顔を上げて」相手をしっかり見て「言った」のです。ですから、この登場人物の強い意志を読み取ることになるのです。
「やんだ」「ともった」「顔を上げて」という表現に注目して、
「書かれていないことに気づく」ことの重要性をお伝えしました。
変化を示す言葉があったときは、それまでどうだったのかを考える。
是非、徹底してください。
国語を得意にするためのトレーニング第2回「『問う力』を身につけよう」②
前回の続きになります。
まだご覧になっていない人は、まずこちらをご覧ください。
苦手な国語を克服するためのトレーニング① - 苦手な国語を克服して、都立日比谷・西・戸山・青山・国立・立川・八王子東高校(進学指導重点校)に合格しよう!
では、「精神分析家の仕事」と同じように「分裂に彩られている」「仕事」とは何だと思いますか? という問いの答えです。
ヒント1 「( )家」という仕事
ヒント2「圧倒的な孤独」
答え 落語家
なぜ、そうなるのかは是非考えてみてください。
それでは、前回の続きに入ります。
前回お伝えしたのは、以下の内容でした。
「精神分析家の仕事も実は分裂に彩られている。」
この一文を読んで、情報を増やすための「問いかけ」を考えること。
これが課題でした。
前回は「も」に着目して、「何と何とがどう同じか」という問いかけをすることが大事だということを学びました。
今日はもう一つの着眼点を示します。
それは「実は」です。
では、「実は」に着目することでわかることは何でしょうか。
そのために、例文で考えてみましょう。
「実はすべて作り話だったんだ」という文をみてください。
これまであたかも事実のように話してきたけど、という内容がわかりますよね。
つまり、「実は」で述べられた内容と反対の内容が意識されていたということがわかるのです。
さあ、これをふまえてもとの文にもどりましょう。
「精神分析家の仕事も実は分裂に彩られている」という文の「実は」に着目することで、増える情報は何でしょうか。
いきますよ。
分裂に彩られているとは思われない精神分析家の仕事も実は分裂に彩られている。
これに「も」で得た情報を加えます。
すると、
「精神分析家の仕事も実は分裂に彩られている」という文が、
「分裂に彩られているとは思われない精神分析家の仕事も落語家の仕事と同様に分裂に彩られている」と読み取ることができます。
いかがでしょうか。
もとの一文が、結構ふくらみましたよね。
国語を苦手な生徒は、文をそのまま受け取りがちなんですね。
大切なことは、情報を増やすことです。
そのために、
この一文からわかることはないか?
・「も」って書いてあるから、他にも「分裂に彩られている」「仕事」があるんだな。それは何だろう?
・「実は分裂に彩られている」って書いてあるから、普通だったら「分裂に彩られている」って思わないかもしれないけど、という内容が隠されているな。
こんな感じです。
これができるようになるだけで、世界は変わりますよ。
ただ字が並んでいた世界が、たくさんの情報をもった世界になります。
次回のブログでは、問いかけの基本をさらにお伝えしますね。
なお、国語が得意な人は、次の問いを心がけてみてください。
この一文でわからないことはなにか? 知りたいことはないか?
・「落語家」が「分裂に彩られている」ってどういうことだろう?
・「精神分析家」はなぜ「分裂に彩られている」とは普通思われないんだろう?
・「精神分析家の仕事」が「分裂に彩られている」ってどういうことだろう?
基本的な情報を得たあとで、こんなふうに問いかけて本文を振り返ったり、読み進めたりします。この問いかけを行いながら文章を読んでいくと、難問を解くことも容易になります。是非、チャレンジを。
ヒント2
本文では「圧倒的な孤独」と書かれており、共通点が説明されています。
国語を得意にするためのトレーニング第1回「『問う力』を身につけよう」①
国語が苦手な人へのアドバイスとしてよく聞かれるのが、「本を読みましょう」ではないでしょうか。
でも、不思議ですよね。このブログを読む人の多くは進学指導重点校受験を考えているのですから、中学校のクラスで上位に入っていますよね。その人たちに「本を読みましょう」は私には解せません。はっきり言って、教師の怠慢以外の何ものでもないとすら思います(笑)。
まずは自信を持ちましょう。
国語の成績を上げるためのアドバイスとしてはカッコ悪いかもしれませんが、無用な固定観念は捨て去った方がいいですよ。
では、真面目なアドバイスです。
国語が苦手な人の多くは、一文から把握する情報量が少ないのです。
また、文と文、段落と段落とを関係づけて読むことがほとんどないのです。
苦手を克服するために大切なこと
①一文からの情報を増やすこと
②文相互、段落相互の関係を考えつつ文章を読むこと
そのために重要なことは自分への「問いかけ」です。
このコツをつかめば、苦手だった国語が得意になったりするかもしれませんよ。
「問う力」に磨きをかけましょう。
では、具体的に見てみましょう。
次の一文を読んで、情報を増やすための「問いかけ」を考えてみてください。
「精神分析家の仕事も実は分裂に彩られている。」
問いかけはいくつ出しても構いません。
多ければ多いほどいいですからがんばってください。
では、今日はこの語に注目してみましょう。
ポイント1 「も」
「も」に注目することで浮かぶ「問いかけ」を書いてみてください。
どうしても実際に自分の手で書いてほしいので、
ちょっとスペースをあけますね。
では、問いかけの例を書きますよ。
いきますよ。
問いかけ① なぜ「精神分析家の仕事も」となっているのだろう?
問いかけ② 「精神分析家の仕事」と同じように「分裂に彩られている」「仕事」は何だろう?
問いかけ①から思考を進めてみましょう。
・なぜ「精神分析家の仕事も」となっているのだろう?
・他にもあるから。
・何が他にもあるの?
・「分裂に彩られている」「仕事」
・「精神分析家の仕事」以外に「分裂に彩られている」「仕事」って何だろう?
はい、問いかけ②にたどりつきました。
重要☞ 「も」の問いかけ=何と何とがどう同じか
では、今日の最後に。
この「精神分析家の仕事」と同じように「分裂に彩られている」「仕事」とは何だと思いますか?
ヒント1 「( )家」という仕事です。
ヒント2 次のブログで示します。
※「も」以外のポイントは、明日のブログでお伝えします。
日比谷高校 2023年度漢字正答率
日比谷高校の2023年度入試の漢字正答率です。
(1)参拝者がリクゾクとつめかける。68.4%
(2)カンケンにとらわれず、視野を広くもつ。0.4%
(3)学問の発展にシする論文。7.6%
(4)都市計画をサクテイする。41.8%
(5)提案のコッシを述べる。36.3%
(1)の正答率が高いのはさすが日比谷の生徒ですね。
「リクゾク」という言葉を知らないから空欄にするのではなく、参拝者が絶え間なくやってくるという言葉を想像して「続」を確定させ「リク」という音で知っているものは一つしかないので書いたという感じでしょう。
この発想で解いた生徒がこれだけいたのは日比谷受験生のレベルの高さを示しています。
一方、(4)(5)を落とした生徒がこれだけいたのは、前回のブログに書いたとおり小学校範囲の漢字を使った熟語の勉強不足がうかがえます。日比谷受験生なので、早慶を併願している生徒も多いでしょうから、準2級や2級レベルの漢字学習が中心になっていたことがうかがえます。
漢字5問の平均点は3.1点です。もし、4問正解をとれていたら5点はかせげたことになります。
前回のブログに示した勉強をするだけで少なくとも3問はとれるようになるはずです。
日比谷の合格も俄然近づきますよね。